この記事は #葬祭ジャーナル jFuneral.com からの転記です

東京博善の火葬料金問題:その構造的な背景

現在、東京の火葬料金、特に市場の6〜7割を占める東京博善の高額な料金設定が問題視されています。しかし、この問題を単に「高すぎる」と批判するだけでは本質を見誤ります。そこには、公営と民営の事業構造の違い、歴史的経緯、そして現在の日本経済が抱える課題が複雑に絡み合っています。

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第6章「火葬場三百年史」も興味深い内容です。

1. 問題の核心:「公営」と「民営」の根本的な違い

この問題の根底には、火葬場の運営主体が「公営」か「民営」かという決定的な違いがあります。

  • 公営の火葬場(例:瑞江斎場、臨海斎場など)
  • 運営原資: 自治体によって運営され、その費用の多くは税金で賄われています。
  • 料金設定: 税金が投入されているため、利用者の負担は低く抑えられています。料金は4万円台から6万円弱が相場です。
  • 目的: 利益追求ではなく、住民サービスとしての「公共性」が最優先されます。
  • 民営の火葬場(東京博善)
  • 運営原資: 株式会社として、すべての運営費用を自社の収益で賄わなければなりません。
  • 料金設定: 9万円程度が相場となっており、公営に比べて高額です。これには以下のコストが含まれます。
  1. 事業コスト: 斎場の維持・管理、人件費、大規模修繕(建て替えには20億円以上かかる場合もある)など、すべて自己資金で賄う必要があります。
  2. 納税の義務: 株式会社であるため、利益に対して法人税などを納める義務があります。
  3. 株主への配当: 利益を株主に還元する責任を負っています。
  • 目的: 公共的な役割を担いつつも、企業として利益を追求する必要があります。

このように、税金で支えられる公営と、自社の収益のみで運営する民営では、料金設定の前提が全く異なります。
両者を単純に比較して「民営が高い」と批判することは、この構造的な違いを無視した議論と言えます。

2. 歴史的経緯:なぜ東京では民営企業が独占したのか

東京で民間企業である東京博善が火葬事業の大部分を担うようになった背景には、戦後の特殊な事情があります。

  • 元々、火葬は誰もがやりたがらない事業でした。
  • 行政がその役割を十分に担いきれなかった結果、民間である東京博善がその重責を引き受けざるを得なかったという歴史があります。
  • 本来、国や自治体が整備すべきインフラでしたが、結果的に民間に委ねられたまま現在に至ります。

3. 外部要因:外国資本と経済政策の影響

近年の急速な値上げの背景には、経営権の移転と日本経済の現状が大きく影響しています。

  • 経営権の変遷: 東京博善の親会社(広済堂)が、村上ファンド、BAINなどの投資ファンドや中国資本(ラオックスの創業者が関わる投資会社)などの投資対象となり、経営の主導権が移りました。これにより、より一層の利益追求が求められるようになりました。
    創業者の依頼で麻生グループがホワイトナイトとして救済に入りましたが無理でした。
  • 円安・株高という経済状況: 現在の「円安」は、ドルなどの外貨を持つ海外投資家にとって、日本企業を非常に安く買収できる好機となっています。東京博善(および親会社)が買収の対象となったのも、この大きな経済の流れと無関係ではありません。この円安政策は政府主導で行われたものであり、問題の根源は一企業の経営方針だけでなく、国の経済政策にもあると言えます。

4. 結論:問題解決のために必要な視点

東京博善の火葬料金問題は、単なる一企業の価格設定の問題ではありません。

  1. 「公営」と「民営」の役割分担: 税金で安価に提供される公営サービスと、自己資金で運営し利益を出す必要がある民営サービスを、どう位置づけるかという根本的な問いがあります。
  2. 歴史的な不備: 戦後、火葬という必要不可欠なインフラを公的に整備してこなかったという行政の課題が、今日の問題の根源にあります。
  3. 経済のグローバル化: 資本の論理、特に円安を背景とした海外からの企業買収が、私たちの生活に直結するサービスの価格にまで影響を及ぼしているという現実があります。

したがって、この問題を正しく理解するためには、運営の仕組みや歴史的背景、そしてマクロ経済の視点から、多角的に考察することが不可欠です。